ありがとう。
忙しくしていました。
円くんが逝ってしまってから普通に過ごす方が良いと思ったので、
忙しい毎日を組み立てていました。
エルちゃんが逝ってしまってから、円くんの毎日が変わりました。
階段の途中にかる窓から外をじーっと見ている時間が一日の中で多くを占めるようになりました。
待っているように私には見えました。
エルちゃんが帰ってくるのを待っているように見えました。
辛抱強いのが辛い
犬って人間みたいに亡骸にすがって泣くことはしません。
少なくとも、円くんもるるくんも冷たくなったエルちゃんを舐めたり匂いを嗅いだりはしていましたが、人間みたいにすがりついてワンワン泣くことはしません。
でも、明らかに円くんはエルちゃんが亡くなって堪えたのだと思います。
すぐに癌が発見されたのもそうですし、階段の窓からじーっと外を見るようになったのです。人間みたいに思い出しながら、シクシク泣くことはありません。
でも、ずーっとずーっと窓を見ながら、4つの足でしっかり立ってじーっと見ているんです。
待っているんだとダーリンが口に出しました。
私も娘もそうだと思ってはいましが口にしてしまうと涙が出てくるから、黙っていたのに男はだめです。
帰ってこないとわかっていると思うのですが、じーっと窓から外を見ているんです。
3月4日からずーっと。
散歩
散歩に行くよ、母さん。
桜が咲く頃、円くんは散歩をねだるようになりました。
それまでは、嫌々お姉ちゃんに引きづられて行っていましたが、るるくんとは別に連れて行くように言っている気がして、なんとなくですが、そんな気がして、
私が毎朝、円くんと散歩に行くようになりました。
円くんはいつもロングコースに行きたがりました。
ロングコースだと30分は優にかかってしまうので、急いでいる朝はとても困るのですが、仕方ありません。
円くんの散歩のために朝のルーティンを変えました。
ゆっくり、のんびり、止まって、匂いを嗅いで、ちょっと歩いて、止まって匂いを嗅いでの繰り返し。
夏
7月に入ると、ロングコースから戻るとハーハー、ゼーゼーが始まったので、ショートコースにしようよと何度も声掛けしましたが、頑としてロングコースを貫きました。
30分から45分になり、円くんの身体に負担がかかっていることは明らかでした。
無理やり、ショートコースに切り替えましたが、今まで10分のショートコースでも、やはり30分かかりました。
8月12日、円くんはショートコースの途中で動けなくなりました。
抱きかかえて帰りました。11キロあるのでとっても重く感じたのですが、
一緒に散歩した最後の日になりました。
何も言わない
円くんが散歩をねだることをしなくなったのは、私に抱きかかえられて帰ったことが彼のプライドをひどく傷つけたからではないかと思っています。
毎朝、散歩に行くるるくんを見送るときにも、あっさりと「行ってくれば」って感じで見送ります。
ウッドデッキに出て、日向ぼっこを真夏でもして、熱々になって部屋に戻ります。
だんだん、後ろ足がおぼつかなくなって、ウッドデッキに出るときに躓くことが多くなりました。
ご飯
お散歩の帰りに抱きかかえられて帰った日から、「ううん、食べない」とご飯を嫌がるようになりました。
ご飯を食べる意志が無くなったらヤバい。
エルちゃんの時のことを家族全員が思い出していました。
食べなくなったら終わっちゃう。
なんとか円くんの食欲をそそるようにあれこれ思案してご飯を工夫しました。
全部食べてくれると大騒ぎをして喜びました。
食べたくないと横を向かれると、無理やり口に入れてお願いだから食べてと懇願しました。
徐々に徐々に食べなくなっていきました。
覚悟してください
動物病院のドクターから何度も何度も言われました。
「はい」と言いながらまだ大丈夫だろうと言う日々が過ぎて、
そろそろ本当にヤバいな、と感じたのは円くんが逝く三日前。
このときの「覚悟してください」は本当に覚悟しました。
円くんは自力で立てなくなっていました。
まだ、ご飯はちょびっと食べたい顔をしていました。
ご飯を全く受け付けなくなって、寝ているときにゼーゼー言うようになったので、
「覚悟してください」と言われたときには、今日が最後かなと本当に覚悟しました。
見つめられて
9月2日3時頃、ふと目が覚めました。
円くんが私を見つめていました。
撫でた円くんは、冷たくなっていました。
「円が逝ったよ。」その声に寝ていたダーリン、娘が集まりました。
ダーリンは泣きました。
声を上げて泣きなした。
私と娘は涙が出てきませんでした。
円くんはいじけ者
最初に我が家に来たのは円くんでした。
留守番が多い円くんは、だんだんいじけ者になっていきました。
甘えるのも下手な円くんにイライラしていたのは事実なんです。
このままでは円くんが鬱になると考えた私は、急いでエルちゃんを迎えました。
円くんとエルちゃんはとても仲良し。
エルちゃんが円くんをフォローしているのは髄所で感じることができました。
だから、円くんはエルちゃんに絶大なる信頼を持っていたのだと思うのです。
後を追うように逝った円くん。
お詫び
エルちゃんは天使でした。
人間たちの感情の機微を敏感に感じ取り、一番良かれと思う行動をしてくれました。
円くんを思いやり、自分より上であることをるるくんに教えていました。
るるくんの甘えにきちんと答え、だめなことはだめだと注意していました。
エルちゃんに甘えて、円くんのことをきちんと見ていなかった、見ることをおろそかにしていたことを痛く心に刻んでいます。
いじけ者の円くんは苦手でした。
でも、「散歩に行こうよ、母さん。」と言ってくれたのは円くんでした。
涙は、今、流れています。
ありがとう。
円くん。